ちょっと、ツイッタでかつのこさんの萌え語りがあんまり可愛かったので、就業中に書いてました←
猫の文次郎にに構う人間留三郎です。
カップリングとまでは行きませんが、ちょっと留文ぽくなったので折りたたみ。
俺はこの界隈をナワバリにしている猫だ。
このスーパーの裏の小さな空き地が俺の住処。餌には事欠かないし、寒さを凌ぐものもある。
何一つ申し分のない環境だ。……いや、申し分なかった。あの人間が現れるまでは。
「おー! 今日も分りにくいところにいるなぁ~ 今日の土産は煮干しな!」
平穏な俺の世界をかき乱すこの人間は毎日のように現れ、土産と称して食いものを持ってくる。
バカタレが、野良猫には野良のプライドがある。 そう簡単に施しなど受けるか!
今日も俺は土産には手を付けず、俺を撫でようと近づく手をバシッと引っ掻いてやった。
「いててて……うんうん、相変わらず元気だな~」
この人間は頭がおかしいのだろうか。 思いっきり引っ掻いてやったというのに、にこにこと楽しそうに笑っている。
思えば最初に現れた時からそうだった。 引っ掻いても噛みついてもにこにこして手を伸ばすのをやめない。 毎日来ては繰り返すからこの人間の手は傷だらけだ。
………そうか、この人間は本当に馬鹿なのだ。
重大なその事実に気付いた俺は一気に力が抜けてしまった。
「お、おいどうした? どっか痛いのか??」
慌てる人間を見上げそんなんじゃねぇ、お前の馬鹿さ加減に気が抜けただけだと返事を返してやる。
「うーん、これは俺の愛情が伝わったって事かな」
ちがう!うぬぼれるな人間! ただお前の馬鹿さ加減に呆れて憐れんでるだけだ!!
話の通じない人間だが俺を撫でる手は温かくちょうど心地良い加減で撫でてくる。
「お前あったかいな~ あ、眼の下の汚れじゃなくて模様だったのか。 まるで隈みてぇだけどお前に似合ってるな」
クマ? クマってなんだ。分らんが俺にふさわしいってことだな?
気分が良いのでしばらく撫でさせてやる。 特別だぞ?
ひとしきり撫でた人間は気がすんだのか俺を地面に下ろした。 やれやれ、やっと終わったか。
「名残惜しいけどもう行かなきゃ。 ホントは連れて帰りたいんだけどな……」
冗談じゃない、触るのは許可してやったがこの自由を手放す気はないぞ。 俺に触りたけりゃお前が来い。
バックステップで距離を置きふーっと威嚇してやれば俺の言いたいことは伝わったらしい。
「分ってるよ、お前を束縛したりはしない。 でもさ、また来た時撫でさせてくれな? あとお土産も食べてくれたら嬉しいな」
ふむ、それくらいならまぁ……
「俺は留三郎ってんだ。 お前、名前ないよな? 首輪もないし」
当然。俺は生まれたときからの自由猫だ。
「じゃあ俺が付ける!……"もんじろう”、今日からもんじろうな!」
名前を付けるという奴の言葉にピクリと耳が動く。
名前は鎖だ。俺の自由を縛るものだ。俺は留三郎の言葉が終わる前に逃げなければならなかったんだ。
なのに、留三郎に名前を呼ばれたのがあんまりくすぐったくて気持ち良かったからつい逃げそびれてしまった。
「明日また来るから。 またな、もんじろう!」
去っていく留三郎の背を見つめながら明日来た留三郎を引っ掻くべきか爪は出さずにいてやるべきか、俺は真剣に考えていた。
俺の名はもんじろう。この界隈を縄張りにしている猫だ。
自由気ままな生活だったが、つい最近自由の一部を失った。
代わりに得たものは俺を撫でる温かい手と愛情。
まぁ、悪くはないな。