■喧嘩の先
秋も深まり、木々が鮮やかに色づく頃。
忍術学園は本日も変わらず賑やかな日常の光景が広がっている。
校内での実技訓練、予習、復習、補習。下級生は日のあるうちに、日が落ちてからは上級生が。
忍術学園が静まり返る時は無いといっても過言ではない。
そんな賑やかな学園においてひときわ賑やかな音を立てているのが、六年生の食満留三郎と潮江文次郎である。
この二人とにかく張り合いたがる。実技の成績、座学の成績から始まり自主練習の量、手裏剣の命中率といった真面目な事柄から食事の魚の大きさ、食べる速さなどの一年生ですら呆れる事柄までその種類を問わない。そしてどちらが勝っても負けても最後には取っ組みあっての喧嘩となる。
友人たちはもはや止める気も無く、嬉々として争う二人を放置していた。
今日もそんな喧嘩だった。元々の原因など二人とも既に覚えてはいない。ただ二人で思う存分喧嘩することこそが目的なのだ。
座学の成績では常に潮江にかなわぬ食満だが、それ以外の事については殆ど同等である。毎日の喧嘩も大抵はお互いが体力を使い果たして並んで横になって終わるのだが、今日に限って食満にはやや体力が残っていた。
大の字で寝転ぶ潮江に馬乗りになる食満。ギロリと険悪な視線を合わせた次の瞬間。食満は潮江の胸ぐらを掴み、力任せに己へと引き寄せた。
色気も無く唐突に合わせられた唇に潮江が硬直していると、焦れた舌が潮江の唇をなぶり入れさせろと無言の要求をする。
その要求に答えた訳でもないが、酸素の減った肺は新鮮な空気を求めており潮江は空気を求めて唇を開かせた。
だが入ってきたのは酸素ではなく待ちかまえていた食満の舌だった。
潮江の咥内に侵入した舌は息をも喰らい尽くすべく動き回り、潮江の舌に絡め、なぶる。
なんとか主導権を取ろうとする潮江だが、体制の不利もありとうとう先に音を上げてしまった。
荒い息を繰り返し肺に酸素を送り込むさまを食満は馬乗りのまま眺め、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ふん、思い知ったか。…俺がどんだけお前に惚れてると思ってやがる。ヘタレてねぇでさっさと奪いに来いよ。」
「…てめぇ、むかつく。」
息を整え終えた潮江は上体を起こし、己の上から食満を引きはがすと逆に地面に押しつけた。
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短文。実は潮江が好きで好きでしょうがない食満。
続きは…R18にしかならないので(汗)今のところ予定はありません。
2010.11.03
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